小山洋介
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シフトレンズとは、かつて大判、中判カメラで行っていたチルト、ティルト、シフトといったアオリ撮影の作業をシフトレンズのみで行うことができる特殊なレンズです。
--目次--
アオリ撮影とは
チルト、ティルト、シフトなどを用いた撮影方法の総称です。

中判カメラでのアオリ例、大判、中判カメラではジャバラがあり上下左右、前後にレンズが動くような設計になっており自由度が高い。
チルト、ティルト撮影とは
ピントの合う範囲は被写体とカメラの撮像面の角度と被写界深度で決まりますが、そのピントの合う範囲の角度を変えることができます。シフトレンズの鏡胴の角度を変えることで実現します。
チルト撮影例
特定の部分を強調するために使用されます。

チルト撮影ではピントの合う範囲を狭める目的で使用することが多いです、近年ではミニチュア風の撮影に利用されたりしています。

チルト撮影例1、特定の部分にピントがあっている。

チルト撮影例2、特定の部分にピントがあっている。
ティルト撮影例
構図全体にピントをあわせる目的で使用されます。

ティルト撮影、料理撮影では手前から置くまでピントを合わせるためにティルト撮影を使用する場合が多いです。

ティルト撮影例1、手前から奥までピントがあっている。

ティルト撮影例2、手前から奥までピントがあっている。
シフト撮影とは
主に建築写真で使用されます。用途は建物の垂直水平を保ったまま、撮像面に写す範囲を変えることができます。シフトレンズの鏡胴を物理的にずらすことで実現します。

シフトなし

シフトあり、レンズの鏡胴をまるごとずらします。

シフトなし、カメラの垂直水平を合わせると建物が構図に収まらない。

シフトあり、レンズを上部へシフトすることでカメラの垂直水平を保ったまま建物を構図に収めることができる。
チルト、ティルト撮影の実際の使用方法
料理写真ではよく目にすると思いますが、手前から奥にかけてすべての商品にピントが合っている写真はシフトレンズを用いてティルト撮影していることが多いです。

ティルトあり、レンズをティルト(ピントの合う範囲を増やすように)撮影することで奥の料理までピントが合います。

ティルトなし、ティルトなし撮影では奥の料理にピントは完全には合っていません。
どのようにして最適なチルト、ティルトの角度を決めるのか
私の場合は実際の現場では目分量でやっています。最適なアオリの計算式は存在するのですが、ピントが合う範囲を目で追いながらアオリの角度を決めた方が実務的には早く作業が進みます。
シフトレンズは必須か?
シフトレンズでなくても、ピントの合う範囲を少しずつ変えながら撮影して、後でピントのあっている範囲のみを合成すると言う手法もありますが、撮影したその場でクライアントに写真を見せるので、シフトレンズで撮影して手前から奥までピントの合った状態でクライアントに見ていただいたほうがイメージが湧きやすいと思います。
シフト撮影の実際の使用方法
シフト撮影は主に店舗や住宅の内観外観の撮影の際に使用します。建築写真では建物の垂直水平をきっちり合わせて撮影することが基本となります。その場合は床から天井までのちょうど中間の高さににカメラを構える必要があります。もちろん意図する写真によっては高いところや低いところにポジションを取ることもあります。
建物の高さが高い場合、といってもほとんどの場合で高いのですが、私は3メートル近くまで伸びる三脚を用意して脚立に乗ってシフトレンズを用いて撮影しています。シフトレンズを用いれば三脚を3メートルまで上げなくても撮影することができますが、レンズをシフトする量が増えるほど画質が劣化していきますので、なるべくシフトさせる分量が最小で済むように三脚の高さを限界まで上げて撮影します。

シフトなし、カメラの垂直水平を合わせると建物が構図に収まらない。

シフトあり、レンズを上部へシフトすることでカメラの垂直水平を保ったまま建物を構図に収めることができる。
まとめ
シフトレンズはチルト、ティルト、シフトと言う撮影用途に対応できる。
- チルトはピントの合う範囲を狭めて、ボケのおおい写真が撮れる。
- ティルトは手前から奥までピントの合った写真が撮れる。
- シフトは主に建築写真のパースを崩さずに写る範囲をずらすことに用いられる。
シフトレンズに利便性は皆無。。
これらシフトレンズはズームレンズのような利便性は全くないです。レンズは重いし、オートフォーカスはできない、可動部が多いためほこりが入りやすく、価格も他のレンズと比べて高い。広角レンズに至ってはレンズが鏡胴より突出しているため傷を付けないように扱いに注意が必要です。